top of page
検索

海事ワンポイント ~人の運送をする事業とは?(その2)~

  • 海事代理士 長沼和敏
  • 2017年6月17日
  • 読了時間: 3分

昨日のブログに関連して、引続きコメントさせていただきます。

昨日のブログでは、事業の一環として、お客さんを乗せて船舶を運航する場合であっても、それが事業の内容のメインではなく、附随的なものであれば、その事業は「人の運送をする不定期航路事業」には該当せず、海上運送法第20条第2項の規定に基づく届出をする必要はない、との趣旨を申し上げました。

 とは申し上げても・・・メインか否か(付随的なものか否か)のメルクマールを挙げることは大変困難です。様々な内容のものを組み合わせて一つの事業を成立させることができ、実際、社会には多種多様の事業が存在しているからです。

 ダイビング・スポット・ガイド事業では、お客さんを乗せ起終点とスポットとの間を往復運航することが事業の内容として不可欠です(そのような往復運航を独立した一つの事業として成立させる(経済的な)動機を見出すことができない)。しかし、この事業において、お客さんの利益(生命・身体の安全)が最も危ぶまれるのは、海中でガイドをするときであり、事業者が最も注意するときともいえます。その意味では、ダイビング・スポット・ガイド事業において、お客さんを乗せて船舶を起終点とスポットとの間で往復運航することは、附随的であると評することもできます。海上運送法第20条第2項の規定に基づく届出をする際、損害賠償保険契約締結が求められますが(20条の2第2項により準用する19条の2)、ガイド事業者も、お客さんへの補償のための損害保険契約を締結しているのが通常ですので、上記のように評し、海上運送法第20条第2項の規定に基づく届出の必要はないとして本法の規制を及ぼさなくても、損害の塡補がなされ得ることになります。

 運輸局(の担当官)が、実際どのような解釈をしているのか不明ですが、少なくとも数年前までは、ダイビング・スポット・ガイド事業者が当該届出をする必要はない、という運用がなされていたことは事実のようです(研修にて確認)。

 私の個人的な見解は・・研修受講当時に「えっ?」と思ったように、この件に関する運輸局の運用に対しては疑問を持ち続けています(^^;)。「海上運送事業の運営を適正かつ合理的なものとすることにより、輸送の安全を確保し、海上運送の利用者の利益を保護するとともに、海上運送事業の健全な発達を図り、もつて公共の福祉を増進すること」が、海上運送法の目的であるところ(1条)、この件において、お客さんの生命・身体の安全は「利用者の利益」に該当し、お客さんを乗せて船舶を運航しているときであっても、その利益を保護すべきだからです。

海事ワンポイント

 
 
 

最新記事

すべて表示
何卒、ご理解をいただきたくお願い申し上げます。

海事代理士は、船舶関係の手続代理人です。船舶版司法書士・行政書士といったところです。 お客様からの配達物が仮に当該手続に係る書類であった場合、各手続きにはそれぞれ期限が法令上定められているため、留守中であってもポスト投函で配達完了となる場合には、「建物外観上、個人宅のようで...

 
 
 

Kommentare


bottom of page