海事ワンポイント ~労働安全衛生法と船員法~
- 海事代理士 長沼和敏
- 2016年1月17日
- 読了時間: 2分
船舶において労務の提供を受けるため船員を雇用している者(以下において「A社」という。)は、船員法における「船舶所有者」と解されるところ、同時に労働安全衛生法における「事業者」でもあります(労働安全衛生法2条3号)。
A社は、労働安全衛生法上の責務を負います(労働安全衛生法3条等)が、一方で、船員法の適用を受ける船員については、労働安全衛生法が適用されることはありません(労働安全衛生法115条2項)。
A社が船員でない従業員を一人も使用していないことは通常観念できませんから、労働安全衛生法上の責務を負うことは、およそ間違いないでしょう。
ところで、「船員法の適用を受ける船員」とは何でしょうか?船員法1条に注目すると「船舶に乗り組む」ことを要件としており、これは航海をするために船舶内で組織される人的組織に継続的に参加することを意味すると解されています。
ここまでの整理から、一つの例を考えてみます。
揚貨装置を用いて船舶に荷を積み、船舶から荷を卸し、又は船舶において荷を移動させる作業に従事する者は、船員法の適用を受ける船員でしょうか?同者は、航海をするために船舶内で組織される人的組織に参加しておらず、船内作業組織の一員にすぎないというべきでしょう(労働安全衛生法施行令6条13号参照)。そうすると、同者を使用する事業者は、先ず、労働安全衛生法上の責務を果たさなければならない、ということになります。

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