電気数学(応用数学)講座
The lectures will be equivalent to the level of the electrical engineering mathematics which had lectured on by Ph.D. Kakuji Yamamoto at Science University of Tokyo.

開講は、相当に先です。しかし、計画は着実に進めています。
開講を目指す背景
弊社は、電気工事業者としては珍しく、電気数学・物理数学を駆使することも通常業務の範囲としており、実際、お客様からは、そういう姿勢を買われています。
しかし、本来、電気工事業者は、最低でも「電磁気学」と「力学」には向き合いながら、現場作業を進めているはずですから、上記「電気工事業者としては珍しく」という表現は、本業界の健全なあるべき姿に照らすと、そぐわないものです。
電気数学で恵まれた世代でした
当時の母校(東京理科大学工学部)での電気数学の講義は、故・山本格治理学博士/工学博士がされていました。コマ数との関係でカットされた内容もありましたが、物理数学の参考書として有名な本をベースに講義がなされ、それが1年後期から2年後期まで(統計学を含めると3年後期まで。これをも合計すると、2年半の期間、受講)続きました。あらためて振り返ってみると、比較的、恵まれた世代であったような気がします。
本講座の目的
電気工事従事者をはじめとする技術系有職者の数学的素養の維持発展です。
電気工事に係る技術は、理工学上の理論・法則を基礎とするものであり、だからこそ確実な安全性を実現することができます。工芸品等において求められる審美性は、電気工事では、所詮付随的なものです。その上、適用される関連法規を適宜確認し、さらにお客様にとっての経済性をも考慮して、ようやく電気工事業が事業として成立します。
理工学上の理論・法則を駆使するための数学を修得できずに、裏付けある確かな電気工事技術を披露できる訳がありません。本講座を開講することで、一石を投じます。
本講座の実施方法
対面講義とし、例題・演習問題等は、講師である私が解きます。目の前に現存する人間がリアルタイムで苦労しながらも数式を展開することで「数式を追っていく現場感」もわきますし、母校での受講経験に照らすと、その方が時間を無駄に費消せず、受講後の復習も効率よくできるからです。
本講座の電気数学の範囲とスピード
本講座の電気数学は、大学における物理数学と、ほぼ同義です。したがって、次の科目が該当します。学生時代、統計学を除く下記の科目については、「電気数学」として、物理学の教授(故・山本格治理学博士/工学博士)から教わり(したがって、物理数学寄り)、統計学については、統計学の教授(平川孝三郎理学博士)から教わりました。単位数は、合計して10単位でした。
常微分方程式論
偏微分方程式論
ベクトル解析
函数論(複素解析学)
フーリエ級数、フーリエ解析(変換)、ラプラス解析(変換)
特殊函数
統計学
本講座では、上記科目のうち特殊函数及び統計学を除いたものを取り扱うことができれば、と考えています。
本講座の講義のスピードは、私が学生時代に母校で受講した電気数学講義の当時のスピードに準ずるつもりです。巷でよく見かけるいわゆる「電験対策のための電気数学」を想定すると、先ず講義のスピードに面を食らい、内容においても直に消化不良に陥ります。「電験対策のための電気数学」を勉強する場合は、自習など別の方法を採用してください。
本講座で前提とされる数学的能力(次のいずれか)
①数学IIICまでの高校数学の成績が5段階評価の4以上に相当し、偏微分を知っている
②数学筆記試験のある入試を経て大学・専門学校に進学し、偏微分を知っている
③大学・専門学校で、微分積分学と線型代数学とを履修し単位取得をした
④現時点において、上記①②③のいずれかと同等以上の学力を有している
本講座の受講条件(いずれも満たすこと)
①研究職・開発職でない現役技術系有職者
②勤務先が無登録電気工事業者など違法事業者でない
③趣味や生涯学習でない仕事上の数学ユーザー
④板書を原則ノートに書く(見るだけなら自習で足ります)
⑤下記「本講座を受講する必要のない具体例」に該当しないこと
本講座を受講する必要のない具体例
①現に『基礎解析学 改訂版』(矢野、裳華房)の掲載問題の5割強を正答できる者
②大学数学科に籍をおいたことのある者(科目履修生も含まれる)
③大学数学専攻レベルの証明の厳格度を「常に」または「ほぼ常に」求める者(下記電気数学の理想と現実参照)
電気数学の理想と現実
電気数学や物理数学に関し、特に大学数学専攻程度の厳格性を求める愛好者から「それでは厳格に証明がなされていない」という指摘がなされることしばしば見かけますが、熱意を持って電気数学・物理数学を受講している人であれば、そのような厳格度について「あまりにも欠けすぎている」と認めるときは、他の参考書をあたるなどして、もう一段、努力を注ぐ傾向にあります。だからといって、数学だけに時間を大いに割く訳にはいきません。研究現場・作業現場における物理的現象・工学的現象につき、これを解消したり、発展的に予想することが、本来の使命だからです。
このことを反映するように、最近では、大学教授が「数学を一定程度習得することは重要だけれども、物理学上の難しさは、数学上の難しさとは異なる」との趣意を示唆している場面を、見かけるようになりました。
電気的物理現象を対象とする電気工学は、数学よりも物理学寄りであり、そうすると、電気工事従事者が講学上でもプロとして習得すべき電気数学においては、あくまでも「数学ユーザー」として電気数学を広範囲かつスピーディーに学ぶ側面と、必要に応じて数学上の厳格度も追及する側面とのバランスを意識することが重要と思料します。
大学数学専攻程度の論理厳格性を「常に」または「ほぼ常に」求める方は、数学で飯を食っているプロ集団の中で揉まれる必要があります。大学数学科の門を叩き、指導教授と厳しい議論をして、新しい定理等を堅実な学会で発表するべきでしょう(私も、学生時代、応用物理学会において半導体に係る研究発表をした経験があります(大変でしたが))。民間において、生涯学習としての大学数学に係る講座を開講しているところもありますが、そのような講座を受講してもお客様として扱われてしまうので、そこでは、指導教授から直に指導される学生並みの厳しさは期待できないと思料します。やはり、大学数学科の門を叩くべきです。
参考文献
<物理数学・応用数学全般>
学生時代に受講した電気数学のノート
応用数学(山本格治、昭晃堂)
自然科学者のための数学概論増訂版(寺沢寛一、岩波書店)
現代科学における数学概説 I/II(後藤憲一、共立出版)
応用数学(野邑雄吉、内田老鶴圃)
応用数学概論(小川枝郎、培風館)
物理数学入門 I/II(Chun Wa Wong、小林澈郎他訳、丸善)
詳解物理応用数学演習(後藤憲一他、共立出版)
<電気数学>
電気数学 I/II/III(現代電気工学講座、オーム社)
電気数学 I/II(内藤喜之、森北出版)
注:これらは、電験で必要とされるレベルを超えています。
<函数論>
詳解関数論演習(小松勇作、梶原壌二、共立出版)
大学演習函数論(辻正次、小松勇作、裳華房)
複素函数論(辻正次、槇書店)
函数論(小松勇作、朝倉書店)
函数論入門(一松信、培風館)
複素解析概論(野口潤次郎、裳華房)
複素解析(宮地秀樹、日本評論社)
複素関数論(加藤昌英、朝倉書店)
改訂工科の数学4複素関数(渡部隆一他、培風館)
複素関数概説(今吉洋一、サイエンス社)
解析函数論(楠幸男、廣川書店)
無限級数入門(楠幸男、朝倉書店)
<微分積分学>
微分積分学(岩堀長慶、裳華房)
微積分の発展(細野忍、朝倉書店)
改訂工科の数学1微分積分(田島一郎、近藤次郎、培風館)
微分積分学(笠原晧司、サイエンス社)
微分積分学(難波誠、裳華房)
多変数の微分積分(大森英樹、裳華房)
微積分(斎藤毅、東京大学出版会)
微分積分学 I/II(宮島静雄、共立出版)
微分積分学(中尾愼宏、近代科学社)
微分積分学(安達謙三、開成出版)
理工系のための基礎と応用微分積分 I/II(金子晃、サイエンス社)
理工系のための基礎と応用微分積分計算を中心に(山本昌宏、サイエンス社)
微分積分(黒田成俊、共立出版)
<解析学>
解析入門(小平邦彦、岩波書店)
解析学概論改訂版(安達謙三、開成出版)
解析演習(杉浦光夫他、東京大学出版会)
多変数関数の微積分とベクトル解析(加藤祐輔、講談社)
<ベクトル解析>
ベクトル解析の基礎と応用(渡辺正、サイエンス社)
ベクトル解析概論(小川枝郎、培風館)
詳説演習ベクトル解析(山内正敏、培風館)
ベクトル解析入門初歩からテンソルまで(壁谷喜継、川上竜樹、共立出版)
<多様体、微分幾何学>
現代ベクトル解析とその応用(池田峰夫、コロナ社)
ベクトル解析と幾何学(坪井俊、朝倉書店)
多様体の基礎(松本幸夫、東京大学出版会)
線形代数の基礎と応用(鈴木秀一、培風館)
トポロジーと幾何学入門(I.M.シンガー、J.A.ソープ、培風館)
<Green函数、境界値問題>
境界値問題入門(草野尚、朝倉書店)
微分方程式の解法 第2版(吉田耕作、岩波書店)
積分方程式論 第2版(吉田耕作、岩波書店)
2点境界値問題の数理(山本哲朗、コロナ社)
應用偏微分方程式論(犬井鐵郎、岩波書店)
<線形代数学>
線型代数学(佐武一郎、裳華房)
線形代数学(岩堀長慶、裳華房)
線型代数学(足助太郎、東京大学出版会)
理系のための線型代数の基礎(永田雅宜、紀伊國屋書店)
線形代数学(川久保勝夫、日本評論社)
詳説演習線形代数学(塹江誠夫、培風館)
線形代数講義と演習改訂版(小林正典、寺尾宏明、培風館)
※キーワードが前後するだけでも理解に著しい差が出てしまうことがあります。一つの科目につき、最低でも5冊は必要かもしれません。
<準備進捗状況>
2021年4月:複素解析(函数論)について、講義ノートの整理は、一旦完了しました。
2023年3月:Green函数について、整理しています。
2024年5月:座標変換について、整理が一旦完了しました。